日本財団 図書館


 

一抹のさびしさがよぎるのを見逃しませんでした。案の定、三日の夜、突然、M君は「相談所へ帰りたい」と言い出し、幾度説得しても気持ちを変えません。相談所と電話で話し合った結果、とりあえず翌日、送り届けることになりました。
M君のホッとした表情が、いまだに忘れられません。翌朝の車中も窓の方ばかりに気をとられて、話しかけてもうわのそらです。相談所に近づくにつれ元気を取り戻し、めざす建物が見えると、「あっ、相談所だ」とひと声。着くなり脱兎のごとく駆け出す後ろ姿は、あたかも我が家へ帰った、いたいけな子供のそれでした。
悪いことは重なるもので、職員の方たちとも今後についての話し合いをしたのですが、私もM君も風邪でダウンしてしまい、会う機会も、距離もどんどん遠くなるばかり。相談所からも「本当に引き取るのですね」と念を押される始末です。「やはり縁がないのでは」と滅入る私たちの消極性が、さらに誤解に輪をかけ、相談所の方々の不信感をつのらせたようです。
一月中句になって半月ぶりの再会でした。帰り際に「また来るからね。早く風邪をなおそうね」と言うと、M君は「ウン」と頷いてくれました。しかし次の訪問には、

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION